Rの母親には眼力がある。
面接者が階段から降りてくるのをちらっと見て一言つぶやく言葉が、妙に当たる。
「あの人は商売人やな。ええんちゃうか」(面接していたら妙にアヤシげな人に見えたんだけど、そのことばを信じて雇ってみたら、確かに商売人気質の真面目ないい人だった。いったいどんな階段の降り方をしたら商売人に見えたのか。)、
「あんな若いのにあんな世間の裏見てきた娘はきついで。」(見た目はふつーのちょっと軽めの子だったけれど、なぜそう感じたんだろう。世間の裏を見てきたのかどうかはわからないけれど、雇ってみたら確かに結構いい根性の子だった)、
「あの子はあかんわ。すぐに辞めるわ」(愛想も良くてハキハキして他のバイトの子とも気が合ったらしく楽しそうに仕事していたので、社長の眼力も今回はハズれたか、と思っていたら、わずか5日で突然辞めてしまった)、
など。
今日も、Rと私が面接した人の履歴書をチェックしていたらRの母親が通りかかったので、人を見抜く能力のあるその目で見てもらおうと履歴書を見てもらったら、ちらっと写真をひと目見ただけで
「この人はあかん」。
すごい! 内容も何も見ないで、写真を一瞬見ただけで!
一体何がひらめいたのかと思って「この人、どこがあかんの?」って訊いたら、
「メガネが大きすぎる。」
はぁ??
「こんな大きなメガネかけてる人、いいひんで。目を取る(採る?)かメガネを取るか、ってとこやわ」
そう言い残してスタスタ去って行った。
「見える」人の御言葉は、凡人には意味不明…。