『書きたがる脳 /言語と創造性の科学』をやっと読み終えた。
一時期没頭して読んでいたのに途中で長く中断していたのは、読みながら思いついたことや気になるページを逐一メモしていた紙切れを途中で失くしてしまって、がっくりしていたせい。
でも、気を取り直して、後半一気に読んだ。
帯には
「人はなぜ『書く』のか?」
「書きだしたらとまらない『ハイパーグラフィア』と
書きたいのに書けない『ライターズ・ブロック』
自らが医者であり患者でもある著者が
文章を書くという行為の障害を通じて
創造性を生み出す脳のしくみに迫る」
とある。
覚え書きのメモを失くしてしまって、日記を書くために読み直す気力もないので、気になった部分の抜き書きだけ。
「側頭葉の変容はハイパーグラフィアを生み出す。」(P14)
「前頭葉に重い障害がある患者は固執が目立つ。」(P153)
「側頭葉に下部に損傷を負った人は選択的に顔の認知能力を失うことが多い。」(P238)
固執、顔の認知能力の低さといえば、アスペ。
実際、自閉症や発達障碍の場合、前頭葉や側頭葉に障碍があったり不活性化だったりするという話をよく聞く。
(まだ研究中で、その他の部位やネットワークに問題がある場合もあるようで、それらの部位の違いが、人によって症状の出方や特徴が様々になる要因だとも。)
その他、脳の領域についての興味深い話がいろいろ。
また、ハイパーレキシア、ディスレキシア、リタリン、ADHD、共感覚、言語習得の臨界期、TMS(経頭蓋的磁気刺激)を側頭葉に当てる研究、『夫には7秒の記憶しかない』の人(クライヴ・ウェアリング)の話等、馴染みあることばや最近他で見て興味あった話もちらほら。
以下、小ネタ的に面白かった部分を抜き書き。
それぞれ話の前後をカットしての書き抜きなので、詳しい説明等気になる方はぜひ本を。
「十八世紀には金持ちのあいだで、人を雇って邸(やしき)の庭で憂うつを演じさせることが流行した。その人物は隠者のような服装をして、髪や爪を伸ばし放題にし、雇い主が提供する絵に描いたような岩屋で暮らすよう命じられた。隠者が足りなくなると彫刻やぜんまい仕掛けの人形で代用された。」(P89)
「先送りには長い進化の歴史がある ― ハトですら先送りする。」(P157)
「脳内麻薬には痛みの抑制以外の効果もあるが ― 麻薬を摂取する人が便秘するのはこのため ― 」(P196)
「実際、黙読というのはわりあい新しい現象なのだ。」(P216)
「文字の視覚的イメージを音に転換する際に重要な役割を果たす角回が損なわれると、かな(音節)を読むことが難しくなるが、漢字の方は問題なく読める。漢字の読みは視覚認知に関わる後下側頭回の活動に負っているらしい。」(P232)
「脳内麻薬の放出を阻害する薬を投与されると、動物も人間もより社交的になる。」(P270)
(以前、脳内麻薬垂れ流しっぽかった頃の私は、誰でもうんちは週一回くらいしかしないものだと思ってた。>P196)
本のテーマのハイパーグラフィアとライターズ・ブロックについては、もしメモが出てきたら、またあらためて。
(引用はすべて
『書きたがる脳』 (アリス・W・フラハティ著 ランダムハウス講談社刊)より)