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エニシオン 「 発 声 」 わたしが最初に彼に向き合ったのは いつだったのか。 彼の朗読を 覚えている。 牢窟のようなあの部屋で 彼は私たちの机に並び、 ひとりきりで 朗読した。 その発声の一瞬、誰もが それぞれのテキストと彼の表情とを 見比べたに違いない。 私は と思いながら 聞いていた。 彼の声は、 私が初めて聞く彼の 彼自身の詩を読む声は、 私たちに取り囲まれたテープレコーダーによって 記録されていった。 私はそのあとで そのテープを何度か再生させた記憶がある。 みんなが 私と同じことを 思ったのかもしれない。 私はそれから 待ち始めた。 私は熱心な読者ではなかった。 作品にはほとんど関心を示さなかった。 ほとんど 一年後だった。 彼の詩がみんなの前でとりただされる場に居合わせたのは、 本当に それが 二回目だったのだろうか。 私は周りの状況を正確に判断する力を ほとんど持っていなかった。 私はみんなのことばによってなでまわされていく彼のことばを そのとき初めてのように目にし、 初めてのように欲情した。 完全なる他体として その完成されたことばを 愛しはじめた。 やっと一年 だった。 ふりかえってみると、 どれも彼のものだったことに気が付く。 それ自身の生殖によって分割されていく 相似形のことば。 その透性、明晰、孤高、被虐。 活字に組み込まれた彼のことばは その距離によって いっそう私を煽情する。 それらが人々の前に晒され解体される時と 同じように。 私はそれらから全く突き放された位置で 私のものではないことばを きいていなければならない。 私と彼との距離。 私と彼という他人。 私たちは決して 語り合ったことがない。 私は彼のことばを求める。 そして その同じ距離で 彼は私を求めるだろう。 彼は私に語るだろうか。 私に向かって語るだろうか。 彼というオナニスト、 彼という被虐。 彼が存在することを そのとき私は知る。 彼の加虐。 彼は屹立する。 遠くで呼ばれる彼の名を 私は復唱してみる。 私は彼に恋してみる。 彼は発声するだろうか。 (1985年頃) (「私は と思いながら 聞いていた。」 の間の空白部分は削除されていた。) 初めて彼の詩の朗読を聞いた時、その第一声で、その場にいた人たちが息を飲んだのを覚えている。 衝撃的だった。 彼が読み終えた後、しばらく誰も口を開くことができなかった。 彼の詩を目にするようになって以来、私はそれまで中毒のように書き続けていた詩を ほとんど書かなくなった。 彼の詩に比べると、私の詩など、何の意味もないつまらない物に思えてしまった。 by karino-tohko | 2006-04-16 23:30 | R << 発見されたもの3 : ある人に... 濃厚タイムカプセル >>