急遽、父の入院が決まった。
父の認知症が進んで夜中も歩きまわったり大量のおもらしをしたりで一層手がかかるようになり、昨年の手術以降左足にリンパ浮腫が出て歩行が困難になった母が父を世話するのは難しくなってきて、かと言って、慌てて申し込んだ特別養護老人ホームは数年待ちで、いったいこの先どうしようかと心配していたところで、妹が動いてくれた。(姉が動かなくてごめん。)
排泄関係の症状が進んだら介護度も上がってその分施設への入居の優先度も上がるはずだから、早くもう一度介護度の見直しに来てもらって、と妹が母をせかしていたらしいけれど、世話するのは限界に来ているはずの母は、「そうね、そのうちね」と、ずるずる引き延ばし。
ああ、まさしく私の母親…。
で、母にまかせておいたら何も進まないと(そして姉はぼーっとして何もしてくれないと)、妹が動いて介護マネージャーに電話して色々当たって、「特養の病院」(と言ってたけど、療養型の病院?)に入院できることになったらしい。
しかも、ちょうど、平日父を預かってくれているデイケア施設がある、その病院。
「今週末か来週頭には入院できるみたい。あの状態やったら、入院したら、もう多分、帰ってくることはないみたい」
病院はどこも満床だと聞くのにそんなに早く!? と驚きながら、これが家で一緒に過ごせる最後の機会になるのかと週末の帰省の予定を固めていたら、今日別件で妹に電話した時に、「そうそう、入院、明日になってん」と。
え?
そうか。もう、家で一緒に食事することはないのか。
去年、
「そう言えば、お父さんもお母さんも、私が作った料理をこれまで一度も食べたことがないかも知れない」と気がついたばかりの私。
今回の帰省で、ふたりに、私が作ったご飯を一緒に食べてもらおうと思っていたんだった。
まさか、こんな急に、父が家を離れてしまうとは思っていなかった。
三月に母が倒れて入院してとんで帰った時に、父のために作った朝ご飯の味噌汁。
あれが、私が父のために作った、そして父が食べた私の、最初で最後の料理になるのかも知れない。
私 「お母さん、ひとりになって大丈夫かな」
妹 「え? 今も昼間はずっとひとりで遊び歩いてるし、おんなじやん」
私 「そうかな。お父さんの世話はしんどくても、いなくなったらなったで、急にひとりになったら空しくてさみしくならないかな」
妹 「ならへん、ならへん。お母さんのそういうとこは私とおんなじで、せいせいして喜ぶだけやん。元々お父さんのことはずっと嫌いで別れたがってたんやし」
私 「え? そんなもん? 嫌いでも、ずっと一緒にいたんやし、いなくなったらさみしくないかな」
妹 「まさか。それより、お父さんの方がかわいそうやわ」
私 「え?」
妹 「え?」
姉妹で受け止め方が正反対で驚いて、思わずふたりで笑った。