私が初めて「オキシトシン」ということばを目にしたのは、去年、惚れ薬のニュースで。
「もうすぐ完成!?開発中の惚れぐすり」
多くの動物にとって一夫一婦制はアブノーマルですが、同じ動物でも人間は浮気をしてほしくない、二人だけの世界を築きたいと願います。例外もいますけれど・・・。そんな人間の気持ちを起こさせる原因だと考えられる物質をエモリー大学の神経科学者が発見したようです!
ちなみに、この研究は自閉症や統合失調症の患者さん達のソーシャルスキルを向上させるのにとっても役立ちますが、抽出された物質は全ての人間に同じ効果があるそうです。
愛でお悩みのある人が目をキラキラさせながら期待をよせる物質は「オキシトシン」というもので、博士は、オキシトシンはコカインやニコチンと同科であると信じ、哺乳類全体の内、たったの5%しかいない一夫一婦制を強いる人間の生物学的反応の根っこだと考えています。
研究の初期の段階でさえ、オキシトシンは被験者達の間で信じる気持ち、共感、感情移入などを増進させました。そして、通常一夫一婦制な動物ハリネズミにオキシトシン遮断薬を投与してみると、この小さな小動物たちがワイルドになり、浮気しはじめたそうです。(Gizmodo Japan 2009.1.27より)
この記事の中の「この研究は自閉症や統合失調症の患者さん達のソーシャルスキルを向上させるのにとっても役立ちます」という部分が気になってオキシトシンについて検索していたら、アスペルガーの症状改善に効果が見られたというニュースがヒット。
その後の研究が気になっていたところ、今日、重度の自閉症でも明らかな改善がみられて効果が実証されたというニュースがあった。
「<自閉症>オキシトシン投与で知的障害者の症状改善 金沢大」
(毎日新聞 2010.4.24より)
脳内ホルモンの一種「オキシトシン」の投与で重度の知的障害のある自閉症患者の症状が改善したと、金沢大・子どものこころ発達研究センターが23日、発表した。主治医の棟居俊夫・特任准教授は「知的障害のある患者で効果が確認された例は初めて」としている。
オキシトシンは出産時に大量に分泌され、子宮や乳腺の収縮などに作用、陣痛促進剤などとして使われている。他者を認識したり、愛着を感じる機能に関係するとの研究結果も最近出され、知能の高い自閉症のアスペルガー症候群で効果が実証されたとの報告もある。
この報告を知った、同センターに通院する20代の男性患者の両親が、08年にオキシトシンの点鼻薬を輸入し、数カ月服用したところ、(1)主治医の目を見て話す(2)対話で笑顔を浮かべる(3)IQテストが受けられるようになる--など症状が改善。10カ月間投与し改善状態の持続も確認した。
男性は3歳で自閉症と診断され、服用前は他者と目を合わせず、質問におうむ返しの反応しかできなかった。
注射や口からの摂取ではなく、点鼻薬、というのが意外。
去年検索していた時に、オキシトシンは「信頼のホルモン」であるとして、それを投与することで無条件に相手を信じてしまうといった話もいくつか見かけた。
その時メモしておいた中のひとつ。
Wikipedia
「オキシトシン」の項より
オキシトシンは良好な対人関係が築かれているときに分泌され、闘争欲や遁走欲、恐怖心を減少させる。
オキシトシンをヒトに投与する実験が行われたが、鼻からの吸引によるこの実験では金銭取引において相手への信頼が増すことが判明。
盲目的に信頼したとえ損害を蒙ってもオキシトシンが再投与されれば再び相手を信頼し、不利な取引契約を締結してしまう。
(米「ニューロン」誌『哲学に影響を及ぼす脳科学』より)
(去年覚え書きしておいたものだけれど、今見たらこの引用部分はWikipediaから削除されているよう。)
それでなくても自閉系の人の中には、ことばの裏を読んだり疑ったりしない人が多そうな気がするので、オキシトシンの投与で症状が改善されるのはいいけれど、この「信頼し過ぎる」効果が裏目に出やしないかがやや気になる。