5月に帰省した時に妹の子らが積み木代わりに遊んでいた、父の自慢だった象牙の麻雀牌。
父の認知症が急に進んで頭の中が麻雀になっていた頃(
「記憶の帰る場所」、
「父のいる世界」)、父の世界はこの牌で構成されていたんだろう。
その帰省中、テーブルの上を片付けていた時に出てきた、父が書いた何か。
手に力が入らないのか、鉛筆を点々と突き立て、覚束ない線をぐるぐる。
幼児が描く絵のように見えるけれど、もしかしたら、何か文字を書きたかったのかも知れない。
何か言いたかったのかも知れない。
幾度もなぞられている一番下の逆さおにぎり型のものや、その上の円の中に小さな丸が入ったものは、顔を描こうとしていたようにも見える。
誰かを描きたかったのかも知れない。
思ったように描けなくなっていることに、自分の頭の中が雲をつかむようになってしまっていることに、不安を感じていたかも知れない。
一番上の写真は、父親の部屋の前にかけられた千羽鶴と、その向こうの、母親の部屋の前にかけられた千羽鶴。
何年も日にさらされてすっかり色褪せている。
父、76歳。母、71歳。
ことあるごとに両親の年齢や生年を確認するようにしているけれど、未だに覚えられない。
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