母の誕生日に、おめでとうを言うために電話した。
「ありがとう。お母さん、70歳になったんやよ。早いなあ。びっくりするわ。70歳って言うたらもうおばあさんやなあ。早いなあ」と、母。
いくら年を重ねても、中身は子どものままのような母親。
子どものようにびっくりしている。
私も自分の年齢を確認するたびにびっくりしているけれど、やっぱりその年になってもびっくりし続けるのか。
私が大学生くらいの頃に妹が
「お母さんが、『昨日、学校に行ってた頃の夢見たのよ。楽しい夢やったわ。目が覚めて夢やってわかってがっかりしたわ。あーあ、あの頃に戻りたいなあ』って言っててん。今頃何寝ぼけたこと言ってんのって思ったわー」
と笑っていたことがあって、私も「そんな年になってもそんな昔の夢見てタイムスリップするのか」と感心したものだけれど、その頃の母よりひと回りほど年がいった私も、いまだにそんな夢を見て「あーあ」なんて思ってる。
私の中では、結婚した頃の私と今の私は未だに“≒”で、記憶にあるその頃の母はしっかりすっかり年配のおばさん。
今、自分がその頃の母とほぼ同じ年なんだというのが、何度反芻しても実感できない。
私の結婚披露宴の席で写真におさまっている母は、やっぱり私よりずっと年上の「お母さん」。
いくら写真を眺めても、その母が今の私とほぼ同い年だと言うのが信じられず、錯視画像を見ているかのような不思議な感覚で、何かの計算トリックに引っかかってる気がして何度も電卓で年数や年齢を叩いてはぐるぐるしている。
その写真の時から今までは、ほんとにあっという間だった。
ということは、またあっという間に、私は今の母親の年齢になるということ。
その時、今の母と同じように、「早いなあ。びっくりするわ」と言ってるんだろう。
何度聞いても覚えられないので、聞いたばかりのうちにメモしておく。
母、昭和17年生まれ。
父、昭和12年生まれ。