そう言えば、10年前から同じ保存液に浸ったままのコンタクトレンズが手元のかばんの中に入っている。
キケン。
「おばあさんになって手元があやしくなってコンタクトレンズが扱えなくなったらどうしよう。もう眼鏡には戻りたくないし」と、以前はずいぶん心配していた。
けれど、そんな時が来る前に、いつの間にかラクなめがねに戻っていた。
火事や災害の時に真っ先に持ち出すものは、当然、めがね。
自分の足元さえ見えない裸眼では、逃げることもままならない。
素っ裸で家を飛び出すことはできてもめがねなしでは飛び出せない、この不便さ。
紙に点々と穴を開けたものや指先で作る小さな三角で多少の代用はできるけれど、それで歩きまわるのは無理っぽい。
出先でめがねを壊してしまったら自力で家に帰ることもできなくなるので、どこに行くにも必ず予備のめがねを持ち歩いている。
それでも、「電柱にぶつかって眼鏡を割って、ぶつかった衝撃でカバンを取り落として自分で踏んづけて中の眼鏡も壊してしまったら」と心配で、嵌めなくなってからもコンタクトレンズ一式も持ち歩いていた。
無人島に唯一何か持って行けるとしたら?
やっぱり、めがね。
裸眼じゃ生きていけない。